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日本の水産業・養殖業の展望を開く

2001年11月02日 15:15

1ヶ月のご無沙汰でした。
この間、アフガン空爆と狂牛病問題が世間を席巻していたという感じですが、その裏では多少お魚の売り上げが上がったということはあったようです。
私の身近なところを見ても、畜産関係の売り上げが1割ほど落ち、逆に水産関係が1割ほど伸びています。
狂牛病に関して言えば、国産牛肉自体は「全頭検査」をして安全確認してから出荷するということで、少しは落ち着きを取り戻しつつあるようですが、加工品関係については、「政府の言うことは信用できない」と思っている消費者が多く、尾を引く可能性があります。
この問題は養殖魚にも関わってきているだけに、一にも早く全容の解明がなされ、安全性が確認されることを期待したいものです。

10月27日~28日の2日間、私が主宰しているメーリングリストfishmlのオフ会を広島県福山市で行いました。
今回は、北は神奈川県から南は鹿児島県まで、13府県総数21名の会員さんが参加されました。
会員さんの職種は、大学の先生、水試等の研究者、魚小売店の経営者、消費者運動家、魚市場関係者、養殖業者、飼料販売業関係者、漁船漁師、水産加工業関係者、釣り人、一般消費者と非常に多彩で、言ってみれば、あらゆる角度から「水産」に関わっている人が参加されています。
いろんな取り組みを行ったのですが、そのうちの一つに「養殖」誌10月号の「水人放言」に登場されたカネト水産(佐藤社長)さんの見学・交流会がありました。
今回は、ここで感じたことを書いてみたいと思います。
種苗生産や養殖のための施設などを初めて見られる会員の方が半分ぐらいおられたようで、いろんな質問がだされていました。
こうした見学会自体は、知らない人達に理解してもらうという点で大事なことです。
普通ならここまでのですが、今回はそのあとに昼食&交流会を約2時間ほど持ちました。
これが相互理解を深めるうえで大きな役割を果たしたと思います。
一番よかったのは、うわべだけの話ではなく、かなりつっこんだ話ができたことです。
例を挙げますと、佐藤社長から出た公務員の仕事ぶりへの批判です。
実は、参加者のなかにも数名の公務員・元公務員の方がおられたのですが、佐藤社長の批判に対して、それに正面から応える形での意見が出されていました。
もう一つは私が言ったことで、「養殖イケスの中の魚の数が、公称と出荷実数ではちがうんではないか。それが「暴落」の要因になっているのでは?」ということです。
これについても、実数をつかむのは困難という現場の実情が出されていました。
これと関連して、「暴落」「暴騰」の繰り返しについて、基本的には「あってはならない」という認識については一致しましたが、具体的な方策については困難だというのが現状で、なんらかの形での強力な指導が行われない限り、今後も起こりうるだろうということです。
養殖コスト問題も出されました。
ノルウェーサーモンなどの輸入ものの生産コストはkg300円、国内で作ればどんなに頑張ってもkg600円以上はかかる。
この問題を解決しない限り、日本の養殖業の将来は無いということです。
この問題は、個別の業者・経営体レベルの問題ではないというのは明らかだということが指摘されました。(内外格差の問題については、「養殖」誌11月号に書いておりますので、ご参照下さい。)
美味しい料理を頂きながら、日本の水産業や養殖業に関するいろんな問題について議論させていただき、非常に勉強になった意義深い1日でした。
後日、「面白い集まりですね,久しぶりに実のある話ができました」と,佐藤社長がうれしそうな顔でおしゃっていたと言うことを聞きました。
我々の訪問が、少しはお役にたったのかなと嬉しく思っています。

fishml会員さんの側でも、重要な変化があらわれています。
「こうやって同じ水産仲間でも、違った業種の方とお話すると自分自身大変勉強になります。カネト水産のおもてなしにも感動致しました。
どちらかというとぼく自身は、職がらどうしても養殖物には否定的だったのです。普段の商売からは自分の目線だけになってしまうのですが、実際に養殖されているところみると、いろんなところに苦労があるんだと改めて痛感しました。それに現実問題としてなくてはならないものですし。一口に水産といっても生産者、流通、消費者、行政、研究者など立場がさまざまで、それぞれの立場からだけ語っても何も改善されないのではと感じました。ではいったい誰がまとめるのか。到底行政や組合では不可能でしょう。勇気をもってそれぞれがお互いに歩み寄る........コミュニケーションをとることが大切なんでしょうネ。」
これは、参加されたある魚小売店経営者の方の感想です。
この方の捉え方は非常に大事なことだと思います。

カネト水産の佐藤社長は、「水人放言」で「情報交換は現場だけでなく、現場の声が研究機関や企業に反映するよう産官学で持ち寄ることが必要だ。」と指摘されています。
これは、技術の問題でのご指摘だと思いますが、もっと広い意味でも同じ事が言えると思いますし、その場面では「産官学」に「消費者」を加えることも必要ではないかと私は思っております。
そうした中でこそ、日本の水産業、日本の養殖業の将来展望を切り開いていけるのではないかと感じております。

今回でこのコーナーは終わりになります。読者の皆さん、一年間、つたない文章をお読み下さり、有り難うございました。
 2001年11月2日
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危機のなかから

2001年10月09日 15:05

今日は10月9日です。
「養殖」編集部さんから、「10月9日が締め切りですよ」と言われて、昨日から書き始めましたが、なんとも文章になりません。
なぜかというと原因は二つ。
ひとつ目は、昨日、朝起きてインターネットを見れば「アメリカがアフガンを空爆」、テレビをつけてもそのニュースばかり。
日本の自衛隊が武器を持って行くとか行かんとか・・・。
こりゃ当分、このニュースばっかりやなあ。日本も戦争に巻き込まれるかもしれん、巻き込まれないまでも、経済活動には大きな影響があるのは必定。とにかくテロなんていや、戦争もいや、平和であって欲しい。。。。
なんて事を考え始めたら、とても、「養殖」誌の原稿を書く気になりませんでした。
二つ目は、「養殖」編集部さんから「いつも厳しい内容だから、少しは養殖業者が喜べるような明るい内容でお願いします」とプレッシャーをかけられていた事です。
ところが、マイカルの経営破綻や狂牛病問題などで、この秋になってから末端の状況は、それまで以上に落ち込んできている状況です。
そんなんで、どこに明るさがあるんや・・と、苦悩している状態です。
特に、狂牛病の問題は、大変です。
養殖魚の餌の問題、蒲鉾の品質改良材の問題、珍味にも牛由来の原材料が含まれている等々、これらの対応について業界はてんやわんやの状態になっています。
普通なら、末端においては年末企画を具体化していく時期なのですが、当面の対応に追われてとてもそこまでできない、厳しい状況になっています。
狂牛病の問題は、デフレ、消費減退で打撃を受けている食品関連業界に、さらに深い打撃を与えています。
国の対策の遅れや方針の迷走が、消費者の不安感・不信感を増幅させていることは否定できません。
一刻も早く、きちんとした方針と対策を取られることを、国に望みたいと思います。

養殖業界と限定せず「水産業界」と枠を広げるならば、比較的明るい話題はあるんです。
サンマが豊漁、アキサケも豊漁。天然ブリやハマチも多い。
先日、いくつかのスーパーを見て回りましたが、山陰産の2kgくらいの天然ハマチの短冊が片身680円でした。
十分、4人前は取れる大きさでした。
消費者にとって、こういうのは非常にいいことです、安くて美味しいお刺身が食べられるのですから。
特に、こうした刺身商材が安い場合は、大人だけでなく子供達も食べますから、魚食普及という観点からも素晴らしいことなのです。(焼き魚や煮魚が食べられない子供でも、お刺身は好きな子が多いのです。)
ところが、養殖業者さんから言えば、これは大変なことです。
大阪の荷受会社の情報誌(11月号)には、「ハマチもブリも天然ものが多いため、養殖物は弱含み」と書いてあります。
ブリのラウンドがkg900円~800円、ハマチに至っては、kg1000円~600円の予測をしています。
これでは養殖業者さんは赤字?ですよね。
サンマは養殖がありませんから、競合はしないと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
ここ数年、末端ではサンマの刺身を重点的に売っています。
何故かというと、サンマの刺身はちょっと手間はかかりますけど儲かるのです。
上記のスーパーでは、丸のままの生秋刀魚は2尾298円でした。
秋刀魚の刺身は、1尾分380円でした。
1尾150円のものが、ちょっと手を加えると2倍以上になるわけです。
このところ、末端では、魚価の低下等による一点単価の低下や競合による値下げ競争のもとで、売り上げは落ちてるは利益率は下がってるはのダブルパンチなのです。
そうした状況ですから、どこも「儲かるサンマの刺身」を売るのです。
そうなると、当然、他の刺身商材が影響を受けます。
タイ、ハマチ、カンパチ、平目などの養殖の刺身商材や、マグロ、イカなどの売り上げは落ちる可能性があります。
そうなると、当然、養殖魚の出荷量は減るし値も下がります。
なかなか、うまくいかないですね。

一度、韓国産のカキを食べてみようと思い、久しぶりに市場に行きました。
そしたら、国内産地のカキが出まわってきたから韓国物は入れてないと言われました。
それで、とりあえず宮城産のカキを入手したのですが、「活ハモ」を1尾、おまけに入れてくれました。
「そのハモ、なんぼや?」と聞いたら、「100円以下」ですって。
中国か韓国のもので、300gくらいでしたけど、1尾100円もしないなんてビックリしました。
この話をfishmlに投稿したら、紀州の漁師さんが「1尾55円の時もあったよ」という返事をくれました。 
これにも驚愕!!! こんなんで漁師さん、やっていけるの?
消費者にとって安いことはいいことなのですが、漁師さんの再生産費用を賄える値段なのかどうかが心配です。
再生産費用を賄えない値段が続くのなら、漁師をやめるしかないわけです。
そうなると、漁獲量も落ちるし魚価もあがり、消費者にとっては安くて美味しいお魚が食べられなくなる可能性があります。
何事にもほどほど、別の言葉で言えば「適正価格」というのがあるはずです。
消費者も満足し、漁師さんも生活していけるという状況を作りだしていかなければと思います。
この論理は、養殖業にもそのまま当てはまると思います。
輸入の安い養殖魚が増え、それに引きずられて国内産の養殖魚も値下がりし、養殖業者さんの再生産を保証できない価格となるのを放置するならば、日本の養殖業は壊滅します。
もちろん、養殖業者さんの企業努力がいっそう求められるのは当然のことですが、各種のインフラの内外格差は企業努力では解決しないのは自明だと思います。
ですから、消費者サイドとしても、「安い、安い」と喜ぶだけでなく、「なぜ、そんなに安いのか」という疑問を持つべきです。
本来、生産者と消費者は、対立する概念では無いはずです。
当たり前ですよね、生産者だって消費者なのですし、消費者のなかの一部が生産者なのですから。
したがって、先に書いた「消費者も満足し、漁師さんも生活していけるという状況を作りだしていかなければと思います。」というのは、やりようによっては可能であるはずなのです。

6月の通常国会で、水産基本法が成立しました。この法律では、基本理念として下記の2点を位置づけています。
   http://www.agri.pref.chiba.jp/nourinsui/13gyoshigen/kanri/saibaishigen/%E6%B0%B4%E7%94%A3%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%B3%95.htm
1.水産物の安定供給の確保
2.水産業の健全な発展
平たく言えば、水産業を国民への食料を供給する産業として正式に位置づけたという事でしょう。
このこと自体、画期的なことと思うのですが、私が注目するのは下記の点です。
「国民に対する水産物の安定供給については、我が国の漁業生産の増大を図ることを基本に、輸入を適切に組合せ(る)」
これは、「水産物の安定供給の確保」の中の3番目に位置づけられています。
順番はどうでもいいのです。大事なことは、「我が国の漁業生産の増大を図ること」が基本だということです。
輸入はあくまで、「適切に組み合わせる」のであって、輸入品が国産品を駆逐するようなことは、この法律の趣旨に反する事です。
このあたりは非常に重要な問題であり、国会においても、輸入による影響緩和のため「セーフガードは引き続き努力」と武部農相は答弁しています。
水産基本法が、真に国民の食料である水産物の供給を保証し、同時に水産業に従事される方の経営と生活を保証するものとなるように、具体的な施策の実現を期待したいと思います。
 2001年10月9日

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この頃、考えること

2001年09月10日 14:53

今年は残暑がきついということだったようですが、全くあたっていませんね。
盆あけころからぐっと温度が下がって、9月に入ってからは、朝夕ほんとに涼しくなりました。
これを書いているのは9月10日ですが、今年2本目の本州直撃台風で、テレビは台風関連のニュースばかりです。
土砂崩れや河川の氾濫などで何名かが亡くなられておられますが、冥福をお祈りするとともに、万全の対策を取っていただきますようお願いしたいものです。

ところで、9月号に書いた文章で、一部正確でないところがありましたので、補足をしたいと思います。。
「活ウナギを炭で焼くのと違い、一部の工程だけを炭で焼くわけですから、本来の「炭焼きウナギ」の美味しさが出ないのは当然でしょう。」
上記の部分ですが、いろいろ情報収集しますと、一言で「炭焼き」といっても、3種類ほどあるようです。
1.完全な手焼きでの炭焼きライン
2.自動での、全工程炭焼きライン(実は、これは信じられないのですが・・・)
3.自動での、一部の工程が炭焼きで、大部分の工程がガス焼きのライン

私が食べた「中国産炭焼きウナギ」が、この3工程のどれで製造されたものかはわかりませんが、味については先月書いたとおりです。
本物の「炭焼きウナギ」とは全く違うのは間違いありません。
なお、「中国産炭焼きウナギ」のなかには、「炭火フレーバー」というのを使って、蒲焼きに「炭の香り」をつけたものもあるようです。
「こんなん邪道やなあ」と思いましたが、業界の中でも「邪道」とされているようですね。
ということで、9月号では調査不足の文章を書きましたことをお詫びいたします。

さて、今月のテーマですが、予定では「ブリ・フグなどの冬商材の見通しをさぐる」というようなことにしていたのですが、景気の先行きの不透明さなどもあり、なんとも予測が難しくテーマを「この頃、考えること」に変えることに致しました。

この夏、家族4人(妻・中2男・小6女)で紀州の逢井港に行きました。
ここには、「八角定置網」があるのですが、定置網を引き上げる船にのって実際に漁場まで行き、漁をしているところを見せてくれます。
夏場なので、定置網に入っている魚の種類は少なかったのですが、そこそこ大きなバショウカジキなどが入っており、けっこう子供達も喜んでいました。
見学したあと、定置網で取れた魚を宿で刺身や焼き魚にしてもらいました。
家族みんなが大満足・・というより、「食べきれない」と贅沢な文句を言っていました。
都会で育った子供達は、漁の模様などはテレビでしか見たことがありません。
実体験として漁業を見ることによって、魚がいっそう身近なものになり、魚を食べたいと思うことも増えるのではないでしょうか。

同じようなことですが、今年の3月に、消費者の方といっしょに愛媛県の北灘漁協に行きました。
これは、愛媛県漁連が毎年行っておられます漁協と消費者の交流の取り組みでした。
この取り組みは、数年前から行っており、北灘漁協さんのほうからは組合長さんを中心にして大勢の方が私どものお店で「北灘の鯛」の販売をして下さいました。
この鯛を買われた方から抽選で数名の方に愛媛まで行っていただき、養殖場見学や魚料理の試食・交流などを通じて、愛媛県の養殖業と「北灘の鯛」への理解を深めると言った内容でした。
参加された消費者の方は、鯛の出荷の様子を見たり、養殖場で鯛に餌をやったり、じかに養殖業者さんからお話を聞いたりして、大変喜んでおられました。
料理は、北灘漁協婦人部の方が作って下さったのですが、鯛・ハマチを使った豪華なもので、なおかつ地元で食べられている料理と言うことで、消費者の皆さんは感激しながら食べておられました。

浜と消費者の交流ということで、今年経験した二つのことを書いてみました。

今、不況がますます深化しています。
小売りだけでなく、市場も浜も、「売れない」「魚価が安い」と言った声が溢れています。
何もしなければ売れない、いろんな努力をしてもなかなか売れない、そんな状況にあります。
少しでも、売れるようにするために、先に書いたような「浜と消費者の交流」のようなことを、もっともっと増やしたらどうでしょう。

養殖魚の場合、まだまだ、消費者に「不安」があります。
不安の原因は、主として「薬品問題」と「環境汚染問題」です。
「養殖」8月号で、廣瀬先生がそのことを指摘されてましたし、fishmlでもそのような議論がありました。
 http://www.fishml.com/yousyokunouo/yousyokugyonituite.htm

私は、消費者の持つこの不安感には、必ずしも根拠があるわけではないと考えています。
本来、養殖魚というものは、人間によって管理されている魚です。
したがって、いつどこで生まれて、親はどの魚で、どこでどういうエサを食べて育ったか、どんな病気をしたかとかも含めて、基本的にはすべてわかるはずなのです。
いっぽう、天然魚は、生まれも育ちもわかりません。
稚魚の段階では岸近くにいる魚が多いですが、汚染海域で生活していたかもしれません。
エサも、一般的に「この魚はこういうものを食べる」ということしかわかりません。
魚によっては、海底に沈んでいる犬や猫の死骸等を食べているかもしれないのですが、そんなことも含めて、消費者が食べる1尾の魚で言えば、確実なことは分からないのです。
一尾ずつ調べればかなりの事が分かるでしょうが、今の流通システムのもとでは、そんなことはできません。

こんなふうに考えてみると、消費者に対して、浜(養殖場)側がきちんと情報を提供すれば、養殖魚に対する不安のかなりの部分が一掃されるはずです。
しかし、現行の流通システムのもとでは、浜(養殖場)側の情報が正しく消費者に届く保証が、残念ながらありません。
ですから、「浜と消費者の交流」が大事なのです。
愛媛県漁連のように大々的にやれればいいのですが、なかなかそうはいかないでしょう。
個別の養殖場レベルでも、工夫次第ではできると思います。
各種の消費者団体と提携するなどして、積極的に見学者を受け入れるようなことを、あなたの養殖場でもやってみたらどうでしょうか。
すこしでも、消費の拡大に結びつくのではないかと思いますが。
 2001年9月10日

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今年の「土用の丑」について

2001年08月16日 14:30

今年は、とにかく「暑い」ですね。
この文章が読者のみなさんの目に触れるのは、9月初旬ですが、そのころもまだ暑いのでしょうか。

鶏がたくさん死んだり、牛の乳の出が悪くなったり、鯛の稚魚が死んだりと動物たちも大変な状況です。
私自身は、この暑さで、「地球温暖化」という問題について、あらためて危機感を持った次第です。
少しでも、地球を守る活動に貢献できるようにと、今まで乗っていた環境への負荷が高いジーゼルエンジンのパジェロから、軽自動車のパジェロミニに乗り換えました。

こういう暑いときは、ウナギがよく売れるというのが定石なのですが、いかんせん「暑すぎ」て、炎天下に買い物をしようという気になれない状態でした。
気温が上がるのが時期的に早かったので、ウナギが売れ出すのも早かったですし、それは良かったのですが、本番の時期が暑すぎて来店数が減少し、ウナギの売上は今一歩伸びず、7月1ヶ月単位で見た場合は、昨年とあまり変わらない状況になったようです。
ちなみに、大手スーパーでは、多くの企業で7月度の既存店売上高が前年実績を下回る結果に終わったようですね。

さて、土用の丑ですが、昨年は「国産の一人勝ち」だったのですが、今年は明確な特徴がないようです。
国産を中心にしたところ、中国を中心にしたところ、いろいろでした。
価格的にも一定せず、サイズもばらばらのようでした。
大手スーパー関係では、とにかく「一点単価」を落とすのを嫌い、国産中心で比較的高い値づけをしていました。
日本を代表するスーパーのIYが国産の特大サイズを1尾798円で大量陳列していましたが、たいがいの量販店がこれを基準とした値づけでしたね。
IYスーパーの情報が事前に漏れていたようで、競合しているところでは、主力商品を1尾680円ラインにしていたところが多かったようです。
中国産では、40尾サイズあたりが多く、1尾480円・2尾880円くらいが多かったようです。

関東方面では中国産の炭焼きウナギを売っている店が多かったようですが、私の見てまわった京都では、あまり目立ちませんでしたね。
炭焼きにすると、1尾あたり100円ほど高めに売る必要が出てくるのでしょうが、買う側にそれだけのメリットがあるのか、その辺の訴えかけが不十分なように思います。
活ウナギを炭で焼くのと違い、一部の工程だけを炭で焼くわけですから、本来の「炭焼きウナギ」の美味しさが出ないのは当然でしょう。
京都の各スーパーのところでは、このへんの認識があったのかもしれませんね。
下記に、中国産炭焼きウナギの工場(焼きライン)の写真がありますので、興味のある方は見てください。
 http://www.fishml.com/unagi/chinasumiyaki.htm

どういう戦略をとるのかは、その店によってさまざまですが、大手スーパーが全体として「高値・利益確保」に走った中で、私の知り合いが出店している紀州のローカルスーパーの鮮魚部では、昨年と同サイズの国産蒲焼を1尾580円で提供(昨年より200円安い)。それとは別に、店主自らが炭焼きウナギのデモンストレーションを店頭で行い、結果としてトータルで「尾数前年比170%、売上前年比130%」の成果を上げています。
これは、一つの教訓として見ておく必要があると思っています。

昨年の土用の丑に販売され、偽表示として大問題になった「四万十」のラベルの張られた中国加工の蒲焼が、今年も安値で販売されていたようです。
それ以外にも、いろいろと「怪しい表示」の蒲焼が売られていたようですね。
懲りない業界だなあと思いますね。
fishmlでもこの問題は大きな話題になりまして、各地の会員さんから報告が入っています。消費者のみなさんは怒ってますよ。当然ですよね。騙しなのですから。
 http://www.fishml.com/uonoryutu/ayasiikabayaki.htm

昨年も、このことはホームページに書いたのですが、こういう無節操なことを繰り返すようでは、そのうち、本当に消費者から見放されてしまいますよ。下記を参照してください。
 http://www.fishml.com/uonoryutu/ripakkuunagi.htm

農林水産省では、ウナギ蒲焼きの適正な表示の推進を図るため、平成13年7月20日から8月31日までを「ウナギ蒲焼きの適正表示推進月間」と位置づけて、啓発活動や実態調査をすることにしています。
この活動のなかで、上記のような不適正表示がチェックされ、正しい表示がされるようになればいいと思うのですが。
なお、農林水産省のホームページでは、「ウナギ蒲焼きQ&A」で、表示について詳しく解説しています。
 http://www.cfqlcs.go.jp/qa/unagiqa.htm

ここ数年、土用の丑ウオッチングを続けてきました。
業界を巡る状況が厳しくなると、いろんなごまかしがあらわれるんですね。
商売だから儲からなければやっていけないのは当然のことですが、消費者を誤魔化してまで儲けようとするのは卑怯な態度です。
昨年、あれだけ批判されたことが、性懲りも無く今年も出てきた。
これでは、この業界には自浄能力が無いと思われてもしかたがないですよ。
原価割れの中で、まじめに養殖業を続けておられる国内産地の業者さんには、ほんとに申し訳無いことだと思いますね。
ただ、私として不思議に思うのは、「偽表示」がこれだけはっきりしてきたにもかかわらず、日本の養殖業者の団体が、公式に抗議をするとかいうことが無いようなのです。
ウナギ業界を正常にもどすには、養殖業者の団体がもっともっと声を上げていくことが必要ではないかと思いますね。

最後に、この問題についてfishmlに投稿された消費者のご意見を転載しておきます。
「(偽表示の問題は)ウナギ業界だけの問題ではなく、流通業界の問題でもあるのではないのでしょうか。それに、不当表示やニセモノ商品は何もウナギだけではないはず。ウナギ以外の水産品、農産、畜産、あらゆる食品に起こりうる(起こっている)可能性大ですよね。生産業界と流通業界、生協のような消費者団体が一緒になって横断的な組織をつくり、不当表示やニセモノ商品の問題解決にとりくまなければ、なくならないような気がします。消費者をなめんなょおぉっ!」
 2001年8月16日

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土用の丑・前哨戦

2001年07月10日 13:29

最初にお断りしておきます。
先月号に、「Fish On Line(FOL)というBtoBのサイトが、7月にオープンする。」と書きましたが、現時点ではまだオープンしていません。
なんでも、支払いのシステムのところがうまくいかないらしいです。
NET通販で一番難しいのが「支払い=代金回収」の問題です。
早く、解決すればいいのですが。

暑い夏ですねえ。
これを書いているのは7月10日、まだ梅雨は明けていないのですが、毎日30度を越える猛暑です。
これは、鰻業界にとっては願っても無いこと、とにかく、鰻は暑くなくては売れないのですから。

今年の土用の丑は、7月25日。
8月号に、今年の「土用の丑の結果について」を載せたかったのですが、制作上の日程の関係でどうしても無理とわかり、9月号に載せることにしました。
そうなると、問題なのは8月号の内容。
さんざん悩んだ末、やはり鰻ははずせないと思い、鰻をテーマになにを書くのか、この2週間ほど試行錯誤していました。
とにかく、巷の鰻販売がどのような状況になっているのか、まずその点の把握からと思い、お店を見てまわりました。
ある信頼できる情報筋の出してきた予想が、国産蒲焼 680円 中国産蒲焼 380円というラインでした。
私も、この予想は納得できるので、自分のサイト(うなぎ情報館)に書いていますが、実際はどんなのが売られているのだろうか、興味深々だったのです。

見てまわった日は、気温が37度近くまで上昇した日で、まさに「鰻日和」。
各スーパーは積極的な鰻販売をしてるだろうなと思って、最初にいったところが再建中の大手量販店。
中国産無頭ジャンボ(10kg40尾サイズ) 1尾 580円、2尾 980円が中心でした。
国産鰻は、鹿児島産(10kg80尾~90尾?) 1尾 680円 加工場がどこかははっきりしませんが、明らかに焼きが甘かった、一見して「高い」と思いました。
活鰻蒲焼(4.5p?)1尾 780円が、申し訳程度に陳列してありました。 

二番目に行ったところが、ローカルチェーンのM。
ここは、昨年夏頃からオリジナル品の「中国産健康うなぎ」というのを販売しているところで、それなりのコンセプトを明確にしていました。
バイヤーが中国に行って、養殖池で池のオーナーと一緒に写真を取ったのを、大きくチラシに掲載していたのです。
中国産が苦しかった昨年の丑商戦の中でも、「中国産健康うなぎ」を売っていたという「骨のある」ところでした。
ところが、この日の売り場というと、中国産のジャンボサイズのカット1枚130円をバラウリ、中国産フランス種の100尾サイズくらいのを1尾250円売り。
これらの低価格品を下段で大量陳列していたのです。
看板である「中国産健康うなぎ」は、中段で1フェースだけの品揃え。
国産の鰻は、やはり申し訳程度の品揃えでした。

3番目に行ったところは生協のお店。
国産蒲焼(鹿児島産)中心で、50尾サイズを780円の設定。
中国産もおいてありますが、基本的に活鰻蒲焼と冷凍国産蒲焼中心の品揃えで、コンセプトはしっかりしています。
価格的には、あきらかに他の量販店より高いのですが、美味しい鰻を売るという姿勢が貫かれています。
スーパーの形態を取るお店の中では、こういう性格を持ったお店は全く「少数派」なのですが、毎年、よく売っています。
今年の場合、昨年よりも消費者の低価格志向が強いですから、どういう動きになるか非常に興味深いところです。

4件目は、昨年、この業界でIYさんを抜いて、売上高日本一になった量販店です。
ここで、「中国産炭焼き鰻」を見つけました。
私は、「中国産炭焼き鰻」を食べたことがなかったので、買いました。
「中国産炭焼き鰻」の炭焼き工程は、ほんの一部だけだということを聞いていましたし、あまり期待もしていなかったのですが、食べるのも勉強のうちですから買ってみました。
味は、活鰻の炭焼きとは全く違いました。
まあ、こんなもんかという程度でした。期待してなかったので、がっくりともしませんでしたよ。
このお店の主力商品は、中国産1尾 580円、2尾 980円が中心。
国産(鹿児島)1尾 780円も売り場を広く取ってました。
活鰻蒲焼は880円(4.5p?)であくまで品揃えのひとつという程度。
「Jオリジナルこだわりウナギ」 1尾690円というのもあったのですが、産地表示がなく、なにものかわかりませんでした。
うなぎ全体の品揃え構成の中の位置付けも、も一つよくわからない商品でした。
東洋水産製の「うな丼」があったので、買ってみました。
レンジ2分で食べられるレトルト商品です。
子供が食べたのをちょっともらいましたが・・・・398円なら納得という、それなりの味でした。

この時点で見た範囲では、中国産の500円前後の商品が中心になりそうですね。
国産は、どうなのでしょう。
680円というラインで売られるのか、今のところ、一店だけありましたが、あまりにも貧弱な鰻なので、あれでは売れないでしょう。

どうも、情報筋を中心とした予測より高い販売価格となりそうですが、これで売れるのでしょうか。
末端の状況は、あきらかに昨年より購買力が落ちています。
そういう中での、中国産のこの価格、果たして消費者に支持されるのかどうか、かなりの不安があると言わざるを得ません。

美味しい鰻を売るというコンセプトが後退しています。
昨年の経験でも、「普段は安い中国鰻を食べるが、土用の丑は国産の美味しい活鰻を食べる」「自分の店で安い鰻を売っているが、土用の丑の日にはうなぎ料理屋さんに美味しい鰻を食べに行く」というような人がおられました。
土用の丑はイベント=お祭りです。
この日だけは、少々高くても美味しい鰻を食べましょうと自信を持って消費者に訴えることができるお店が、もっと出てきてほしいですね。
まわったお店で、国産鰻を主力にしたお店は生協のみ。
準主力に設定しているお店もありますが、もっと「美味しい国産鰻」を前面に出して、消費者におすすめしていただきたいものだと思いました。
 2001年7月10日記

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